「創業・起業の基本戦略」(中小企業実践経営学入門 創業・起業編)は、中小企業の創業・起業にかかわる基本戦略を実践的に、やさしく述べたものです。
著作者 日本総合戦略研究所(21世紀文明研究所) 近藤章人
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第17章 売上の増加と利益の確保、資金繰りの計算、手形・小切手に注意、トラブルが起きたときの対応
1.税理士に依頼し、期中にも経理帳票を作成し、経営判断の参考としよう。
(儲かっているのか、損しているのかわからないようでは経営者として失格である。)
2.開店・開業後、売上の増加と利益の確保に留意し、いくら努力しても採算が合わない場合は傷が浅いうちに不採算の事業から撤退し、利益のでない製品・商品は廃止する。
3.売上だけでなく、資金繰りを計算し、資金ショートをしないように注意する。
勘定あって銭足らずということがおきる。
月商や固定的な経費から、必要な運転資金は計算できるので、余裕をもって確保する。
当てにしていた入金が遅れたり、取引先が倒産して焦げ付きが出たりすることは、注意をしても防げない場合がある。
できるだけ早いうちに、取引先を分散しておく、それもできるだけ異なった業界の取引先を確保する。
4.手形・小切手はできるだけ使用しない。
万が一のとき、待ったが効かず、企業維持が可能な程度の利益が出ていても、瞬時に倒産になる。
やむをえず使用する場合も、入金をあてにせず、資金繰りに余裕をもたせ、管理をしっかりすることが重要である。
振り出された手形を期日までそのまま保管するほど資金に余裕がある企業はほとんどないので、依頼返却は難しい。
融通手形(取引の実態のない手形)は連鎖倒産の危険があるので命取りになる。
金融機関の人間は融通手形を見破る能力があるので、融資のときは不利になる。
5.いくら資金繰りに困っても商工ローンやサラ金の悪質な甘言にのらない。
冷静に考えれば自社の利益率より高い高利を返済できるわけがない。
ノンバンク、高利貸、商工ローン、サラ金など銀行以外にも合法・非合法なさまざまな会社がある。
深みにはまったら、どうしても返せなくなったら、弁護士に早めに相談すること。
ただし、破産をするのにも、弁護士に相談するのも、ある程度の金はかかる。
民事再生も申し立てた後、支援者がいないと大変なようである。
6.設立まもない企業を相手にしてくれる地元の信用金庫、地方銀行などをメインバンクとしよう。
政府系金融機関は新規・独立開業でも相談にのってくれる。
融資を受けられたら、返済の実績をつけて末永いお付き合いをしよう。
ある程度大きくなったら都市銀行・地方銀行をメインバンクとして、信用金庫、政府系金融機関をサブバンクとするとよい。
(金融機関には業態により、それぞれ特徴がある。金融機関それぞれの役割・特徴を理解しよう。
複数の信用金庫と取引するよりも、複数の業態の金融機関と取引をした方がよい。)
何かのときに助けてもらえるかどうかはメインバンクとの日頃からの取引の実績にかかっている。
(ただし、最近は必要以上の理不尽な取引はしない方がよいようだ。業況が悪ければ、なかなか助けてくれない。)
7.最近は、キャッシュフローを重視して、できるだけ銀行から金を借りないようにしている企業が、業種によってはある。
開業時にできるだけ設備投資を控えて、日銭が入る、または現金売り上げが可能なサービス業をする。
また、小売業や工業の場合でも、店舗や工場を自社では持たないで、通信販売や外注を活用する。
資金の調達は株式市場に上場して直接金融で調達することを目指す企業である。
8.電話とパソコンとファックス、または研究開発者と営業・管理担当者だけで事業ができれば理想である。
しかし、まったく新しいビジネスモデルを考えたとしても、マネをする競争者はかならず現れるので、よっぽどオンリーワンの知識・技能・創造性によるコンテンツや技術でない限り、難しいであろう。
9.企業経営にはなんらかのトラブルがつきものである。
その際に税理士、弁護士、弁理士、司法書士など専門家に相談しアドバイスが得られるような態勢を日頃からつくっておく。
最近では国際的な問題などに対処するため、専門家がグループでアドバイスをすることも多くなってきた。